ホーム > イベント&キャンペーン > イベント > ギャラリー開催 過去の写真展 > 安田 菜津紀 写真展 「君が生きるなら−HIVと、子どもたちと−」
(c) 安田 菜津紀
「あそこにエイズの村がある」
人々が指差した先には、緑の壁。それがこの村との出会いだった。
カンボジアに初めて渡航してから12年となる。目まぐるしく変わり続けるもの、そして変わらず残る温かいもの。そんな光と影が交錯し、混じり合う社会に生きる人々の姿を目にしてきた。
通い続けている村では、HIV感染者を抱えた家族たちが生活を共にしている。元々は首都プノンペンにあった集落が、開発に伴い郊外に追いやられたものだ。いつも出迎えてくれる少年が「遊びに行こう」と手をとると、荒れた指の感触が残る。薬の副作用で、その肌はぼろぼろになっていた。
この村に過った死の不安。いまなお根強い偏見と、外から浴びせられる心無い言葉。そんな運命と向き合いながら育つ子どもたちは、どんな大人になっていくのだろう。出会った頃はただただ不安を胸に、シャッターを切り続けていた。
けれども時を共にするごとに、そこには小さな喜びがあり、ごく穏やかに流れる日常があることを知った。大切なのは相手の言葉にじっくりと耳を傾けながら、自然体で向き合うことだと教えてもらってきた。
そんな村の息吹のひとつひとつを、写真に込めました。
安田 菜津紀(やすだ なつき)
1987年神奈川県生まれ。studio AFTERMODE所属フォトジャーナリスト。
16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。2012年、「HIVと共に生まれる−ウガンダのエイズ孤児たち−」で第8回名取洋之助写真賞受賞。共著に『アジア ×カメラ「正解」のない旅へ』(第三書館)、『ファインダー越しの3.11』(原書房)。上智大学卒。