ホーム > イベント&キャンペーン > イベント > ギャラリー開催の写真展 > 薈田純一 写真展 「プライベート・チャイナ」 旅の記憶
まだ糧票(食糧切符)が中国にあったころ、学生のとき旅をした。英語の通じない国への初めての一人旅だった。その国にまた旅に出る。すると前に置き去りにした自分の影に出会う。開封の路地や北京の街で迷う自分がいた。広州から鄭州の長距離寝台列車の中で24年前の僕が筆談で途方に暮れている。無意識に採録された記憶が、偶景のように次々とよみがえる。記憶だけではなくその時の感覚を感じて背中が、ぞわっと粟立つ。気がつくと旅よりもその影のことばかりを考えている。
考えるのをやめよう。レールが甲高い音をたてる。イメージに身を託そう。古くて新しいスターフェリー。緑海の深さ。高速艇の白い軌跡、今日の飯、腹痛、若い夫婦の床屋、値段の交渉。
そうやって愚直に旅を刻んできたら、洛陽の路地でまた置き去りにした自分を見た。思い出した感覚に圧倒される前に僕は誰もいない路地に向かってシャッターを切った。そして旅の断片を切り取ってふと感じた。僕の中の密やかな中国がこうやってまた生まれてゆくのだな、と。
出展作品数 カラー 約30点
(c)薈田純一
兵庫県神戸市生まれ。小、中学校時代を米国ですごす。外国通信社勤務。
1994年 通信社退社後、人物ポートレート、「偶景」をテーマに撮影を始める。
2002年 個展「Destiny」新宿コニカプラザ
2004年 個展「Visions of Trees」新宿コニカミノルタプラザ
2005年 「サンクチュアリ」第25回新風舎出版賞ビジュアル部門優秀賞受賞
2007年 個展「Photosynthesis 夜想樹たち」新宿コニカミノルタプラザ
2008年 個展「Primary Days」オリンパスプラザ東京・大阪
2009年 個展「Visions of Trees Projected」MUSSE F(表参道画廊)
2011年 個展「Book Shelf」表参道画廊